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INTERVIEW Vol.2INTERVIEW Vol.2 監督 山本靖貴 × シリーズ構成 横手美智子

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Chapter 2:複数の視点により浮き彫りにされていくキャラクター

 いよいよ放送となるTVアニメーション版『戦場のヴァルキュリア』。前回のインタビューでは、原作からアニメーションへと受け継がれていく想いをテーマとしたが、今回は、それらがどのように昇華されアニメーションとなっていくのか監督の山本靖貴氏とシリーズ構成を担当される横手美智子氏のお話を3回に分けてお届けする。
 第2回は、ゲームである原作に対してどのようなオリジナル要素を追加したのかについて伺った。

――アニメーションならではのオリジナル要素はどのようなものを入れ込まれましたか?

横手:出来事的にはゲームとほぼ同じで、足したりちょっとアレンジしたりというところですね。と、自分では思っています。キャラクターの変化はゲームではあまり描かれていないと思うんですが、そこは恋愛ものということもあって、好きになったりちょっと離れたりといっただんだん変わっていく感情を厚くしました。ゲームだと、アリシアとウェルキンのフラグがいきなり立って、がっちり結びついちゃうじゃないですか。それをもうちょっと揺らそうと。そういう意味でアリシアがツンデレというか元気になっている部分はあると思いますが、キャラクターとしてブレてはいないと思います。

山本:ウェルキンは原作だと、指揮官らしいビシッとした部分もあれば、オタクなところもあって、キャラクターとしてどっちなんだろうと思っていたんですよ。アニメではそこの統一感というか、性格を綺麗な流れにしたかったので、より一貫したキャラクターになっています。最初からウェルキンはそういう変なやつだって。

横手:ウェルキンは揉めましたね。変な人なの? 完璧超人なの? と、言う点で。ゲームだとウェルキンは優秀な指揮官として勝ち続けますしね。

――補充兵はどのように膨らまされましたか。

横手:私の中で、小隊の隊員の影が薄いなという思いがあって、もうちょっと描きたいと思っていました。

――すごい勢いでヤンが登場しますよね。

横手:本当は、イーディとかをもっと出さないといけないんですが、ヤン、みんなが大好きなので(笑)。補充兵の設定はセガの方に頂いたり、裏設定をこそっと見せて頂いたり、門外不出の資料を頂いたりで決めています。

山本:とにかくキャラクターが多くて、誰かをフィーチャーしちゃうとえこひいきになってしまうので、そこのところが難しいですよね。ただ、みんな個性が強いので、居るだけで存在感があるのかなと思って出しています。ヤンは特に存在感が強いですけれど、ほかの小隊員も要所、要所でいい味を出しますよ。

――配置されるときに気にされていることは?

横手:ここにはこういう人が居るといいかなと思う人を配置しています。

山本:小隊の編成は横手さんがやられています。横手さんのストーリー的に、ここにこのキャラがいたら、もっと面白い方向に話が転がるかなという人を組み込んでいます。イロモノ小隊と呼んでいますが(笑)。

――三角関係がアニメオリジナルですが、これはどのような理由でしょうか。

山本:ゲームの主人公ウェルキンとアリシアの恋愛要素はゲーム中でも語られるんですが、結ばれるまでがあまり描かれていない。なので、恋愛を通して二人が成長していくところを見せられるようにというのがありまして。そこは膨らませないと中途半端になってしまうんですよ。

横手:ファルディオも途中いろいろある中で、ウェルキンやアリシアへの想いもあるだろうと思いまして。そこを逆算で考えると三角関係になりました。

山本:ファルディオは、ゲームに比べるとかなりオリジナル要素が強いので、アニメーションの中で随分作りこんでいった感があります。その後の展開も、ゲームとは印象ががらっと変わってくるとは思いますね。どうなるかは、アニメオリジナルなので作品を見て頂ければと思います。

横手:三角関係もさじ加減が難しくて、アリシアが嫌な子にならないように気をつけています。ウェルキンとファルディオの間でふらふらするというよりは、恋と自覚していない初々しさ、少女っぽさを出していきたいですね。

――ファルディオの副官がオリジナルとして登場しますが。

横手:ファルディオって、ゲーム中だと一人で登場するので、どんな隊長かわからないんですよね。じゃあ、ファルディオってどういう風に隊員と接しているのだろうと考えたときに、ああいう小さい男の子でファルディオに心酔しているキャラクターが出てくるとより際立つと思って。

山本:アニメの中だとお付きのキャラクターがいろいろ登場するんですが、これは、誰かの目を通してそのキャラクターを表現したかったからです。各キャラクターに独り言をしゃべらせるわけにもいきませんから。そういう点でのオリジナルキャラクターも多いです。

――セルベリアの副官のカール・オザヴァルトもそうですよね。ああいうキャラクターだとは思いませんでした(笑)。

横手:あれは、下山さんの意見です(笑)。